氷のアートが美しい『甲武信岳』
2011年11月22日(火)
前日の午後から横浜若葉台で会議だった。
会議場から直接『甲武信岳』の長野県側登山口である、毛木平へ向かいたかったので、まずはお風呂
職場仲間にこちらの温泉を教えてもらい、初めて利用。¥500で2時間まで。
正式名称は『横浜温泉 チャレンジャー』って書いてあったが、意味がよくわからない。
かなり古そうな設備だったが、緑茶をそのまま長い時間放置したような湯色で、若干塩気があり、湯温はほど良かった。洗い場の数が多くあるのでありがたい。この料金なら、また利用してもいいかも、の温泉だった。
そして『味の民芸』で夕食。このチェーン店、私はお気に入りなのだが、我が家の近所や職場までの道程には見当たらないので、ここで会議があると食べたくなってしまう。
八王子から中央道に乗る。
22日は晴れで気温が下がる予報。まだスタッドレスタイヤに履き替えていないため、道路が凍結する前に登山口駐車場に入りたいと思った。
…しかし、車線を右往左往の居眠り運転になってしまったため、初狩
で仮眠。
毛木場駐車場に着いたのが午前3時。
空はプラネタリウムばりの星空だった。
起床5時 トイレに行ったら‘冬季使用禁止’の貼り紙がしてありドアは開かない。
トイレのない場合に備え、車にはエコポットを常備しているのだ。
気温-6℃。空気は冷たいが風がないので案外平気。
晩秋の山に来たというつもりだったが、もう冬山装備として考えるべきだった。
【コースタイム】毛木場駐車場06:34→千曲川源流コースと十文字峠&三宝山コースの分岐06:39→十文字峠(十文字小屋)07:37/07:41→大山08:06/08:14→三宝山09:30/09:40→甲武信岳09:59/10:12→甲武信小屋10:18/10:24→甲武信岳10:33→国師&金峰と千曲川源流コース分岐10:40→千曲川源流10:46/10:49→ナメ滝11:27→毛木場駐車場12:28
500mほど歩くと、千曲川源流に向かって沢沿いを歩いて登るコースと、十文字峠から三宝山を経由して甲武信岳へ登頂するコースの分岐となる。
今回は三宝山経由で登り、沢沿いを下りるという周回コースとした。
しばらくの間、沢に沿ってなだらかな坂を登って行く。
道はよく踏まれており、歩き易い。
さすが百名山へのルートだ。
足元には霜が10cmは軽く超える長さでニョキニョキと四方から顔を出している。
沢から外れると九十九折の坂が急になり、この寒さでも雨具を途中で脱いで登った。
八丁坂の頭である尾根に出ると、あとはトラバースでなだらかに十文字峠まで。
陽が当たると途端に暖かい。
太陽の有難みを感じる瞬間である。
十文字峠の標識が現れると、その右手には十文字小屋が建っている。
もちろん冬季閉鎖中。
小屋の周囲はシャクナゲの木で覆われていた。
この冷凍のように固まっている草木がそれである。
開花の時期にはさぞや華やかであろう。
小屋前は広場になっており、椅子やベンチも備えられてある。
ここで初めて水分補給。
家を出る時には、この気温を想定してこなかったので、普通にペットボトルのジュースを1本と水1本を持参した。
テルモスに温かい飲み物でもあったらなぁ。
大山手前に差し掛かると足元に岩が多くなり、そしていよいよ鎖場が。
案外斜度のある、でも手がかりもきちっとある、登って楽しい岩場が続く。
木の枝から薄緑色でモヤモヤっとカーテンのような、とろろ昆布のような物が垂れ下がっていた。
苔の一種だろうか。
そういえば知床の原生林でも同じ物を見た記憶がある。
岩場(鎖場)を登り切って振り返ると、遠くまで続く山並みが一望できた。
そして大山山頂到着。
太陽が眩しくて、取り直しても目が開かない
こうして見ると、高い山こそ見当たらないが、深い山なんだなぁ~とつくづく思う。
今回は急遽この甲武信岳行きを決めたこともあり、また百名山だからルートもはっきりしているだろうと思い、きちんと地図を見てこなかったために起きた敗因が2つある。
それがこの写真中央にある『武信白岩山』である。
ピークに白いマークが立っているのが見える。
登れるとわかっていたら登ったのに…と振り返って眺めてから後悔
ルート上には岩に×マークがついていたので行ってはいけないと思ってしまったのだ。残念
苔は変わらないが、針葉樹林から白樺?ダケカンバ?で背が低めの木が増える。
穴のようになっているところには、細かい氷の粒子のようなものが周囲を縁取っており、光に照らされキラキラと美しい。
小さな緑から生命力が感じられ、なんとなく写真に撮りたくなった。
三宝山 2483.3m
一等三角点が設置されている。
こちらの方が甲武信岳よりも少し高いのだが、樹林に囲まれ見晴らしもパッとしないため、高度感もないし人気もないのかな。
広場になっており、陽も当たるため、ここでチョコブラウニーを1つ食べた。
三宝山からはなだらかな道で、甲武信岳山頂手前でぐぐっと急登になる。
登りきるとスポッと樹林を抜けて見晴らしの良い絶景が広がる。
甲武信岳山頂 2483.3m
富士山はくっきりとはいかないまでも、山頂付近に雪をつけた姿が望める。
山頂には4~5名の男性がいた。
八ヶ岳はもちろん、北アルプスも見えると話していたので、どれがどれだかわからないまでも、一応北アルプスのつもりで写した1枚。
こちらはいつか縦走したいと思っている、国師岳から金峰への稜線。
実はここで2つ目の失敗が起きる。
私の頭の中には今回の周回コースの分岐、は、甲武信岳を過ぎて甲武信小屋までの間に右手へ曲がる分岐(千曲川源流ルート)があると思い込んでいた。
なので軽快に甲武信小屋方面へと下山開始。
ケルン越の富士もまた良い。
ところが分岐はないままに甲武信小屋へ着いてしまったのだ
あれ?見落としたかな?と地図を広げるがどうもピンとこない。
そこで山頂で一緒だった人が下りてきたので訊いてみた。
すると、
「そっちは山頂から国師に向かって行かないといけない。」と教えてくれた。
へ そうなんだ。もう一度地図をよ~く見てみると…あ、本当だ。印刷が重なりあって見えにくいが、確かに分岐は山頂にあった。
しかもさっき眺めていた国師岳方面だなんて ちょっと恥ずかしい
まあ私らしいや。
そんなわけで、もう一度甲武信岳山頂に登り返し、この山頂分岐から国師方面へと下山開始となった
甲武信岳山頂から10分もせずに千曲川源流ルートへの分岐となる。
今度は間違いない
こちらのルートはさらに人が多く使うルートなのだろう。
よく踏まれているし、丸木で整備されている。
そして大きな木に『千曲川信濃川水源地』の標識が立っていた。
登山道脇になるので、沢へ下りるとプラスチックの鎖に固定されたコップに『主水』と書かれて置いてあったので拝借。
伏流水からなのか、下から湧いているようにも見える。
量は少ないが、絶え間なく湧き流れる水。
千曲川の最初の1滴を飲んだ。
味は冷たすぎてわからなかった。
でも清らかな味だと心で感じた。
上の最初の水からこうしてゆるやかな浅い水溜まりのようなところから川が始まる。
ここからその細い沢に沿って下山ルートは続いていく。
だんだんと水量が増していく。
気温が低いため、氷がこうして様々な形を造りだし、水流や苔、太陽の光と相まって、それはそれは美しい。
下山ルートは千曲川源流が生み出した水と氷のアート。
歩いては止まり、進んではシャッターを切り、自然の造形美に飽きることは無い。
沢ルートなのでこうした岩々の道もある。
大きな岩をルート上に幾つも見掛けたが、この山域(金峰、瑞牆、西沢渓谷など)の特徴だろうか。
上と同じかなぁ?ちょっと違う気もするし。
他にもオレンジ色っぽいのもあった。
この一帯は多分カラマツと思われる。
足元は針葉樹の茶色でいいクッションになっている。
林道が途中でY字に分かれる。ここに標識がないが、右手の沢沿い下りルートが毛木場駐車場へ続いている。
千曲川はすっかり水量を増した。
千曲川源流ルートは、こうして距離の表示がわりと細かく記してあった。
背の高い木々。
冬は太陽の陽射しを下までいっぱい浴びれるようにすっきりしている。
紫陽花のような花弁。
毛木場駐車場に12:28着。
ガス一式を持参したが、途中は寒くてじっと座ってお湯を沸かす気にはなれなかった。
駐車場は風はなく、陽射しはポカポカで暖かい。
カップラーメン、そして暖かい緑茶でお腹を満たし、パノラマの湯に向かったが休館日だった
時間が遅くなるほどに高速を降りてからの渋滞が怖いので、そのまま帰路についた。
13時に出発し、帰宅は17:30。
登山よりもずーっとハードなのが車の運転であった。
久し振りの山。自然の美しさ、厳しさ、偉大さを感じ、人間の弱さを感じる。
平等の恵みを感じ、やっぱり私は山や自然が大好きなのだ。
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